試作を通じて、形のないモノに形を
● 試作を通じて、まだ形のない社会課題の解決策や新ビジネスの創出に取り組んでいます。
佐々木
コロナ禍において、試作ネットの加盟企業が京都府から紹介を受け、イオンリテールさん向けに買い物カゴの自動除菌装置「ジョキンザウルス」を開発しました。この装置は、積み重ねた買い物カゴの持ち手を1つずつ自動で持ち上げ、紫外線を照射して、短時間で持ち手の裏側まで除菌する仕組みです。
伝統産業向けの事例もあります。例えば、饅頭に意匠を刻む際に使うはんこの試作です。はんこを製作する菓子木型(きがた)職人さんは、現在日本に5人ほどしかいない状況です。そのため、一部の菓子メーカーははんこを入手したくても、いつ依頼が完了するか分からないという困りごとを抱えていました。試作ネットでは、従来木製だったはんこを、従来より安価で短納期に対応可能な樹脂製のものへ置き換える提案をしました。その後、多くのバリエーションのはんこの製作を依頼していただけるようになりました。
また、スタートアップ企業からの依頼も増えています。長岡技術科学大学発のスタートアップ、パンタレイさん(新潟県長岡市)からの依頼もその一例です。同社は流体技術に強みを持ち、製品として小型風力発電機を世に送り出そうと試作品の製作を複数の国内製造業者に依頼していました。しかし、「図面がないとできない」と多くの企業から断られる状況が続いていたそうです。偶然、同じ展示会に参加していたことをきっかけに知り合うことができ、試作品の開発にまで至りました。
新しいビジネスや社会課題を解決できるようなアイデアに形を与えるコンセプトモデル(概念試作)や、量産に対応した設計・仕様の試作を作る量産化試作は、試作ネットが得意とする分野です。例えば、伝統産業が数多く息づく京都においても、職人さんの減少によって衰退してしまったり、存在そのものがなくなってしまうものがあります。試作ネットができることは、はんこの事例のように既存の材料を新たな素材へ置き換えることや、職人さんが担っていた仕事を自動化・機械化することです。これによって職人さんがいなくなっても産業そのものを残せるようサポートしています。試作を通じて、伝統産業そのものを守っていきたいと考えています。

