日本の誇る「ものづくり」。アイデアはあっても相談先が分からず、一歩を踏み出せない人は少なくありません。そんな人々の駆け込み寺が、
「よろずものづくり相談拠点(よろず相談)」
毎週火曜9時〜17時、京都試作センターで百戦錬磨の経営者が無料で、かつ「対面」で相談に応じます。
今回は、活動を支える拠点長の松岡さん(株式会社ニューネクスト)、副拠点長の小島さん(共進電機株式会社)、衣川さん(株式会社衣川製作所)ら、京都試作ネット創設メンバー「1G(第1世代)」の3名に、活動の裏側にある情熱と彼らが描く未来を伺いました。

※ 左:衣川さん(株式会社衣川製作所)中央:副拠点長の小島さん(共進電機株式会社) 右:拠点長の松岡さん(株式会社ニューネクスト)
「ウェブじゃ伝わらん熱(文化)が ある」対面で向き合う、117通りの人生ドラマ
「よろずものづくり相談拠点」 が産声を上げたのは、2022年の1月。世界中がコロナ禍で足踏みをしていた時期でした。「自分たちに今、何ができるんやろう」という切実な危機感から始まったこの活動は当初、開発・試作の支援を 想定していました。しかし、いざ窓口を開けてみると、そこには多種多様で、それでいて切実な「作りたい」という想いが山ほど眠っていたのです。
活動開始から約3年。これまでに向き合った相談件数は117件にのぼります。この活動を最前線で支えるのが、京都試作ネットの創立メンバーであり、自らを「1G(ファースト・ジェネレーション)」と自虐気味に呼ぶレジェンドたち5名。彼らが何より大切にしているのが、あえてデジタルに逆行するかのような「対面」での対話です。
「今の時代、メールやZoomで済ませれば効率的かもしれません。でもね、やっぱり直接会わないと伝わりきらない『熱量』とか『行間』があるんですよ」
と、松岡さんは実感を込めて語ります。
相談に訪れるのは、大手企業の開発担当者から、個人の発明家、さらには「夫の夢を形にしたい」という主婦の方まで。そこには117通りの、様々な人生のドラマがありました。
松岡さん
「個人の方なんですけど、いつもご夫婦でいらっしゃるんですよ。ご夫婦でいらっしゃって旦那さんの方がもう熱を入れて、永久機関っていう夢のようなものの発明の話をされる。で、奥さんはずっと黙って横にそっと添いとったんですけど、後でちらっと聞いたら、『その夢を少しでも前に実現させてあげたいんです』って言わはって。これちょっとやらないかんな、と」

「物理学的には難しいかもしれない。でも、その想いを頭ごなしに否定するんじゃなくて、時間をかけてじっくりとお話を聞く。ビジネスとして成立するかどうか以前に、誰かに話を聞いてもらうだけで救われる心がある。僕らはその『落としどころ』を、経験を交えながら一緒に探っていくんです」
他にも、亡き夫の遺志を継いで「レンコンの泥落とし機」を完成させたいと願う女性や、伝統的な絵具を砕いて再生させたいという夫婦。彼らが持ち込むのは、完璧な図面ではなく、時にはチラシの裏に書かれた拙いスケッチや、言葉にならないぼんやりとしたイメージであることも少なくありません。
松岡さん
「相手の目を見て、膝を突き合わせて話す。そうすると、その筆跡の強さや、話し方の熱っぽさから、その人が本当に成し遂げたいことの『解像度』がグッと上がるんです。本気の熱に触れると、僕らも『よし、なんとかしてあげよう!』って、お節介なスイッチが入っちゃうんですよね(笑)」
毎週火曜日の相談窓口は、単なるビジネスの場ではありません。技術と情熱、そして良い意味での「ヘンタイ的」な探求心がぶつかり合い、新しい価値が生まれる「磁場」のような場所。相談員の温かな笑い声と、時折見せる鋭い技術者の眼差しが、相談者の不安を「ワクワク」へと変えていくのです。
