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2025年10月22日技術コラム
【技術コラム #1】 京都試作ネットが考える – プロトタイプではなく試作の真の価値とは?

「試作」と「プロトタイプ」、この2つの言葉を同じ意味で使っていませんか?多くの技術者や開発者にとって、これらはほぼ同義かもしれません。しかし、私たち一般社団法人京都試作ネットでは、この2つを明確に区別しています 。その違いは、単なる言葉の定義に留まらず、ものづくりの未来を左右する事業哲学そのものなのです。
今回は、私たちがなぜ「試作:SHISAKU」という言葉にこだわり、それを世界に発信しようとしているのか、その深層にある思想をご紹介します。
「プロトタイプ」:図面から始まる加工
まず、一般的に「プロトタイプ」や「プロトタイピング」と言われるものは何を指すでしょうか。 つまり、設計が完了し、仕様が固まった後の工程で、提供された図面に基づいて忠実に形にすることです。ここには、企画や開発の意図を深く汲み取る余地は少なく、図面がなければ何も始まらない、という受け身の姿勢が前提となります 。
「試作(SHISAKU)」:源流から始まる価値創造
一方で、私たちが提唱する「試作」は全く異なるアプローチです。
- 関わるステージが違う:
「試作(SHISAKU)」は、開発工程から巻き込み、図面が無いところからプロダクトに参加します 。 - 関わり方が違う:
私たちは 「ゲストエンジニア」として企画会議に入り、最上流工程から、まさに源泉から生まれる最初の1滴から開発に参画します 。


これは、単にモノを作る「加工」ではなく、お客様と共に価値を創り出す「開発」そのものです。だからこそ私たちは、従来の「試作加工」から「開発試作」へとシフトしなければならないと考えています 。
なぜ「試作:SHISAKU」にこだわるのか
この区別には、明確な事業戦略と思想があります。我々は「加工は死んでいく、干上がる池である」と考えています。価格競争や海外との競争が激化する中で、単なる加工業には未来がないという強い危機感を事業開始以来参画企業は持っています。
そこで私たちは、ものづくりのプロセスにおいて付加価値を生み出すために、以下の「3つの想像・創造」を実践しています。
- 市場の想像
- 顧客の創造
- 価値の想像
開発の最上流から関わることで、市場や顧客、そして製品が持つべき本質的な価値を共に考え、形にしていく。これが私たちの目指す「開発試作」であり、「試作:SHISAKU」の核心です。
「SHISAKU」を世界の共通語へ
私たちは、この日本独自のものづくりの思想を世界に広めたいと考えています。「金型:KANAGATA」や「改善:KAIZEN」、「板金:BANKIN」のように、
「SHISAKU」を世界共通語にしたいのです 。
そして、私たちの法人名「一般社団法人 京都試作ネット」の英語表記を、「KYOTO prototype net」とはしない理由もここにあります 。そこには、「SHISAKU」という言葉に込めた意味と誇りがあるのです 。
「“作る”から“共に創る”へ」
「プロトタイプ」が図面という「結果」からモノを作る行為だとすれば、「試作:SHISAKU」はアイデアという「源流」からお客様と共に価値を創造する行為です。
私たちはこれからも、単なる加工業者ではなく、開発の初期段階からお客様に寄り添うパートナーとして、「試作:SHISAKU」の価値を国内外に発信し続けていきます。
執筆者 株式会社クロスエフェクト 代表取締役 竹田正俊
