過去・現在・未来における日本のものづくりについて
山本
日本の物づくりは、正直残念ながら技術立国でこのままいけるのかと疑問になります。日本の企業は今まで下請け型の企業だったので、ただ言われた物を作ることしかしてきませんでした。自分たちで頭をひねって新しいものを創造という能力を日本の企業はこれから真剣にやらないと日本の物づくりは守れないと思います。自分たちがプロデュースをし、それから新たなものへのチャレンジをする。要するにコアのある技術を常に開発していく必要があります。マスプロダクションがすでに崩壊して、日本の役割が変わった以上は、日本の中小企業は自分たちが今まで持っていた技術に安閑せず、次のステージを早く見出さないといけないと思います。日本の物づくり、今の中小企業は皆少しずつ背伸びをしないといけません。
木皿
日本の技術は「進歩しては昔を振り返ってみて、また進歩して……」で現在に至っていると思います。というのも東京のスカイツリーが、五重塔の作り方と全く同じような耐震構造をしており、法隆寺の五重塔も、今から1200年以上前に出来たその真ん中の芯柱を使って免震機構を作っているのが分かっています。日本の技術も決して捨てたものではなく、オンリー1の技術がたくさんあります。山本精工さんもそうだし、京都試作ネットもオンリー1の技術を各社が持っていて、後はどうプロデュースしてくのかという話になります。総合技術であるJAXAのロケット技術とか宇宙開発には、中小のべンチャー企業のオンリー1が集まってできていると考えているんです。だから、技術を繋いでいけば、まだまだ色んなことが出来るんだろうなと思います。
山本
みんな固有な技術をバラバラでもっているので、これを上手く合わしていくと、更なる新たな技術開発が生まれると思います。京都試作ネットは色んなカテゴリーの技術がある。それをいかに組み合わせする事によって新たなものづくりが生まれるかと言えますので、私は京都試作ネットをやっていて本当によかったと思っています。
木皿
今後は自分の所だけが突出しようというよりは、日本の技術をトータルとしてコーディネートしていくという考え方が主流になると思います。京都試作ネットは皆がwin-winなっていくという考え方をしておられると思うので、広く日本の技術に繋がっていくことを期待しております。
山本
ありがとうございます。技術を繋ぐという点では、人材の育成も大事です。弊社の企業理念には「理解と寛容を持って人を育てろ」があります。理解と寛容を持つような余裕が現在の日本企業には無いので、それを持たないと、人は育たないと思います。単に目の前の利益という点からすれば、いわゆる失敗とか無駄とか言われてしまう所にこそ本当の人の育つ要素があると思います。日本の企業がこれからの人材を育てるには、日本全体が理解と寛容を持ちながら人を育てていくような心の余裕を持たないといけません。一方、中小企業はそう簡単にトップが変わりませんから、じっくりと構えて人を育てる時間はあります。ただ物を作る、要するに能率、効率、合理化みたいなことになっていますが、これは本来あるべき方向とは逆行してしまいます。こういう時だからこそ社員を理解しながら、本当に能力のある人を育てないといけないと思います。
※本記事は2011年3月時点の内容に基づいています。山本精工株式会社は2014年4月にHILLTOP株式会社に社名変更しました。