宇宙太陽光発電開発中のエピソード
木皿
開発中はトラブルなど、たくさんあったと思います。
山本
常に高い要求ですので、最初はやっぱり作っても作っても歪んだりして、思ってたものとは随分違うこともありました。今までの加工技術をもってしてでも、予期せぬ事が沢山ありましたので、いくつも失敗を繰り返しながら進めました。でもその失敗が次の私たちの技術の成果になりますので、非常に良かったと感じています。
木皿
宇宙太陽光発電は2030年ぐらいに静止軌道上に原子力発電所一基分ぐらいの太陽光発電所を作ってエネルギーの無い日本に送ろうというプロジェクトの研究です。ロケットを打ち上げるときに一番問題になるのは、とにかく軽くすることで、大きな太陽の光を集めるミラーを、平方メートル当り100グラムにする必要があります。何となく出来そうな気がするんですけども、実際の所を見てみると、とてもチャレンジングな値です。常識的な感覚を持つ企業に頼んでも、「ダメですね、出来ません」と断られます。それを断らないで、まずじゃあやってみようかというところにお願いしようと思っていました。やる気が無い所では受けていただけないので、面白いと思ってやって頂けるところに、チャレンジングだけどどうでしょうか、と(笑)。
未来に向かってすべきこと
木皿
JAXAの正式名称は「宇宙航空研究開発機構」です。「研究開発」なんで、研究がベースにあり、宇宙開発もあるというスタンスだと思っています。なので研究し続けることはすごく大事だと思います。研究というのは成果は分からないけど、とにかくこの方向を探求してみようというふうな所からスタートしていくので、そのような見方で物事を進めていくことで色々なシーズを見つけ出すことができます。そのシーズと産業会のニーズとがマッチングしていけば非常に良いのですが、メーカーはシーズだけを開発することをは難しい。官であるからこそできる問題があるので、その官でやる技術を広く日本の技術として、ひいては世界的に提供していくのが、官の研究者の役割だと思っています。
山本
京都試作ネットの最終的な目標は、京都を試作の一大集積地にすることです。これを実現するためには個々の企業が、実は早く自立し、どの企業も製造業ではなく、製造サービス業になることを目指さなければなりません。ただ言われたものを作るのではなくてサポーティングインダストリーとしての自立をしないと、欧米の企業に勝てません。自らが知恵を出しながら、新しいものを創造していくという製造サービス業を目指す必要があります。今まで培ったものをもう一回冷静に見ながら、一つ一つ強い力を持ち、私たち京都試作ネットは、個々の企業が早く自立し、製造サービス業への転身を早く図っていくというのが今のところの身近な目標です。
※本記事は2011年3月時点の内容に基づいています。山本精工株式会社は2014年4月にHILLTOP株式会社に社名変更しました。